桜は見事だが

一宮城

いちのみやじょう Ichinomiya-Jo

別名:一宮陣屋

千葉県長生郡一宮町一宮

(一宮小学校・城山公園)

城の種別 平山城(丘城)

築城時期

不明

築城者

不明

主要城主

須田氏、正木氏、加納氏 

遺構

水堀の一部

満開の桜に彩られた模擬大手門<<2001年04月08日>>

歴史

築城時期は定かではない。

天文二十三(1554)年四月の、北条氏による上総侵攻・久留里城包囲戦では、一宮城主須田将監が里見勢に加勢して活躍した。
翌弘治元(1555)年に再度北条氏が久留里城に来攻した際に、須田将監は北条方に内通、城外の入城寺に北条勢を誘い込み、住職とも共謀して城内に火を放ち北条勢を招きこむ作戦であったが、事前に里見義堯に通報され、住職と須田将監以下内通者は処断された。この後、一宮城には大多喜城主・正木時茂の養子、正木大炊助が入ったが、永禄七(1564)年の第二次国府台合戦の後、勝浦正木氏が北条氏に通じて里見氏と離反し、翌年、勝浦正木時忠により攻められ、大炊助は海上郡に逃れた。その後、勝浦正木氏は里見氏に復帰し、一宮城には正木大炊助が返り咲いた。天正六(1578)年、里見義弘の死去により「梅王丸騒動」が勃発、里見氏は内乱状態となり、梅王丸を支持する上総派と、里見義頼を支持する安房派に分裂した。大多喜城主・正木憲時は梅王丸を支持したが、義頼に攻められ、天正九(1581)年に大多喜城は落城、憲時は内通した家臣に殺害された。これ以来、一宮城は里見氏直轄となったようで、天正十八(1590)年の小田原の役では鶴見甲斐守が守っていたが、本多忠勝の軍勢に攻められ落城し、一時廃城となった。この間の経緯は諸説あり、史実と伝承が不分明で確証はない。
享保十一(1726)年に加納遠江守久通が一万三千石で入封し、一宮城跡の一部を陣屋として整備し、廃藩置県まで八代142年間統治した。

僕が勤めている会社の施設が一宮町にあり、その縁があって訪れてみました。城跡、というより近世陣屋跡の台地上には土塀が復原されていますが、城址遺構としては目ぼしいものはなく、わずかに堀跡と思われる水溜りがあるのみでした。現在では一宮小学校と「振武館」が建っています。こんもりと茂る城山には、もしかして多少の遺構はあるかも知れませんが、藪に覆われている上、附近の宅地に近いので探索はちょっと難しいかもしれません。水堀?のようなものがあるのがちょっと気にかかるくらいです。

で、前々から実は気になっていたのですが、勝浦正木氏に一宮城を追われた「正木大炊助」って誰?というのがひとつ。もうひとつは「鶴見甲斐守」って誰?というのが二つ目。

前者の正木大炊介は、後に大多喜城主となり、里見義頼と争って滅亡する正木憲時のことである、という説も根強くあるようですが、「すべてわかる戦国大名里見氏の歴史」(川名 登/図書刊行会)など、里見氏・正木氏に関する研究書の多くは「別人」としています。僕もどっちが本当かはわかりません。

もうひとつの「鶴見甲斐守」ですが、多くの説明では「里見氏家臣」であるように取れますが、それであれば徳川家康勢と闘う必要は全然無いわけで、天正十八年当時の情勢を考えると、庁南城の武田氏、または万木城の土岐氏配下の将ではないか?そんな気がします。まったく確証はありません。

この一宮城が立地する丘陵はさして高い場所ではありませんが、平野に突出した丘陵の先端部に築かれていて、九十九里の海岸方面に眺望が利き、また当時は海岸線がもっと迫っていて、一宮川の河口に近かったことから、里見氏・正木氏の東上総における海上交通・軍事の拠点になっていたようです。里見義頼と正木憲時の争いでは、大多喜城とともに正木氏にとっての最後の拠点になりました。
僕が訪れた時期はまさに桜が満開の頃でした。ま、城址としては見所はないに等しいですが、この桜だけでも良しとしますか。

別に桜を見に来たわけじゃないのですが、見事です。素晴らしいです。 城址から一宮市街。かつては海岸線がもっと近く、一宮川河口が入り江のように入り込んでいて、東上総の重要な港でした。
振武館の周囲には土塀が復原されていました。ここは近世加納藩の陣屋が置かれた地でもあります。 最後の藩主、加納久宣公の墓。藩籍奉還後も県知事として、また教育、農政などの分野でも活躍した人らしい。

城山の周囲にわずかに残る水堀。これがこの城の唯一の城郭遺構か? 

 

 

交通アクセス

東金有料道路「東金」ICより車40分、九十九里有料道路「一宮」ICより車10分

JR外房線「上総一宮」駅徒歩5分

周辺地情報

高藤山城、夷隅町の万木城など。

関連サイト

 
 
参考文献 「房総の古城址めぐり(上)」( 府馬清/有峰書店新社)、「長生の城」(小高春雄)、「久留里城誌」(久留里城再建協力会)、「さとみ物語」(館山市立博物館)、「すべてわかる戦国大名里見氏の歴史」(川名 登/図書刊行会)、現地解説板

参考サイト

余湖くんのホームページ房総の城郭

 

埋もれた古城 表紙 上へ