関東の覇権を夢見た小弓公方の野望

小弓城

おゆみじょう Oyumi-Jo

別名:南生実城、小弓御所

千葉県千葉市中央区南生実町

(埋蔵文化財調査センター〜八剣神社周辺)

城の種別 平山城(丘城)

築城時期

不明

築城者

原氏

主要城主

原氏、足利義明(小弓公方) 

遺構

曲輪、土塁の一部、空堀の一部

小弓城遠景<<2002年01月13日>>

歴史

築城時期は不明だが、千葉氏が亥鼻城を築城するとほぼ同時に、支城として築城されたらしい。応永年間(1394〜1428年)から千葉兼胤の弟・原四郎胤高が居城して以来、原氏累代の城となった。康正元(1455)年には、城主・原胤房が馬加城主・馬加康胤をともに亥鼻城を襲い、千葉宗家を滅亡させた。永正六(1509)年には、連歌師宗長が原胤隆に招かれ、小弓城で猿楽や連歌に興じたことを、その日記「東路の津登」に残している。

永正十四(1517)年、真里谷城主武田信保は古河公方に対抗し、足利高基の弟、義明を擁立し原胤隆の小弓城を攻撃、奪取する。足利義明は翌永正十五(1518)年に小弓城に移座し、こうして南関東に「小弓公方」と呼ばれる勢力が形成される。以後長く小弓城一帯は古河公方・北条氏・千葉氏・原氏らの勢力と小弓公方足利義明・上総武田氏・里見氏らの最前線として緊迫状態に置かれる。しかし天文七(1538)年の第一次国府台合戦で小弓公方は討ち死にし、上総・安房勢力は南に退く。原胤清は小弓城を奪還したが、北方1kmほどの台地上に新たに生実城(北生実城)を築いて移転した。小弓城は廃城となった。

すぐ近くに同じ読み方の「おゆみ城」があります。ややこしいのでここで紹介している城を「小弓城」、のちに移転した城を「生実城」と記載します。モノの本などではこちらを「南生実城」、新しい方を「北生実城」と記載しているものもありますが、「小弓公方」というコトバの関係上、こういう記載にしました。

関東の戦国史を語る上で欠かせない古河公方と小弓公方の存在、そして第一次国府台合戦。加えて、今は千葉県民(ほんとは越後の人)の僕としては、千葉一族・原氏の動向や武田・里見といった上総・安房の在地勢力も気になります。この関東戦国中期の混沌とした現場を見たくて行きました。遺構は全く期待していなかったので、まあこんなもんかな、という感じ。もともと戦国初期の築城で、第一次国府台合戦直後に廃城になっていることから、戦国後期のような高度な普請は行われていなかったでしょう。それでも、わずかに残る土塁などは、往時の隆盛を忍ばせてくれます。

城地は小高い丘の上で、すぐ南は上総国境。今見ればさして要害地形には見えませんが、意外に台地周囲の崖は急斜面で、恐らく当時は周囲は湿地、というよりも村田川が江戸湾に流れ込む港湾だったと思われますので、まあ「あのあたり」の地形としては合格点なのかな、と思ったりします。それでも「要害」なんて言えないと思いますが。

遺構そのものは土塁、堀などの残骸が断片的に散在しています。まとまった規模のものはありません。主郭は墓地に、それ以外は農地か住宅に化けてしまいました。まあ、時代の流れだから仕方ないでしょうね。

南西方向から見た小弓城の台地。比高10m前後といったところでしょうか。 埋蔵文化財調査センター裏の空堀跡。でも地主の「犬にフンさせるなこの土地に入るなゴミ捨てるな」の激しい看板にこれ以上進む気が失せた。手入れもされてないし。

埋文センター裏の大土塁。センター裏の道路も堀底道でしょう。 その堀底道。周囲は畑と宅地です。写真左には八剣神社があります。

その八剣神社裏にわずかに残る空堀跡。近年殆ど埋められてしまいました。写真でも見えるようにゴミが散乱してました・・・ 主郭近くの宅地に残る、分断された土塁。無残。

墓地の中に城址の碑と解説版。埋文センターからこの墓地まで800mくらいあるので、往時は結構広い城だったと思います。主郭西側には気持ち程度の土塁があります。下は崖。 絶景、とは言わないが上総方面に眺望が効きます。ただ、このすぐ目の前に建物の基礎工事をやっていたので、じきにこの景色も見られなくなるんじゃないでしょうか・・・・

 

 

交通アクセス

京葉自動車道「蘇我」IC車5分。

京成千原線「学園前」駅徒歩15分。

周辺地情報

ここから北に1.2kmほどで原胤清の生実城(近世の生実藩森川陣屋)があります。遺構の程度はここと大して変わりません。

関連サイト

 

 

参考文献

「房総の古城址めぐり(上・下)」( 府馬清/有峰書店新社)、「新編房総戦国史」(千野原靖方/崙書房)、「国府台合戦を点検する」(千野原靖方/崙書房)、「新編戦国房総の名族」(大衆文学研究会千葉支部/昭和図書出版)、「さとみ物語」(館山市立博物館)、「すべてわかる戦国大名里見氏の歴史」(川名 登/図書刊行会)、「日本城郭大系」(新人物往来社)、『史跡をたずねて 千葉市南部 生実周辺』(宍倉健吉・「千葉県の歴史19」収録/千葉県)、現地解説板ほか

参考サイト

余湖くんのホームページ房総の城郭千葉氏の一族

 

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