軍事的にも重要だった安房の古刹

妙本寺砦

みょうほんじとりで Myouhonji-Toride

別名:妙本寺要害

千葉県安房郡鋸南町吉浜

城の種別

海城・陣場

築城時期

永正十二(1515)年

築城者

里見義通

主要城主

里見実堯

遺構

曲輪、堀切

保田漁港からの遠景<<2002年03月10日>>

歴史

永正十一(1514)年、里見義通が安房北郡に討ち入りを駆けた際、弟・実堯を副将にして陣取った。翌十二年三月、義通は妙本寺を要害として取り立て、実堯を眼代(代官)に任命した。天文二(1533)年から翌年にかけての里見家の内訌(天文の内乱)では、里見義豊の軍勢と、北条氏の援軍を得た里見義堯が妙本寺付近で合戦、義堯が勝利し、義豊は安房に撤退、その後滝田城周辺の犬掛での合戦で義豊を討ち、前期里見氏は滅亡し、義堯から始まる後期里見氏の流れが誕生した。

北条氏と手切れの後はたびたび北条氏の侵攻を受けた。第一次国府台合戦後の天文十三(1544)年には北条氏による占拠を受けている。また、北条氏康が天文二十二(1553)年、北郡の正木兵部太輔、峰上城の吉原玄蕃助ら峰上二十二人衆を手引きして安房・西上総に内乱を起こさせた(房州逆乱)際に、北条綱成が妙本寺付近に上陸し、妙本寺住職・日我は金谷城に避難している。

妙本寺は安房有数の日蓮宗の古刹で、寺伝によれば駿河大福寺の住職・日郷が開山の祖で、康永年間(1342-1344)、房州に遊歴中、地頭職笹生左衛門尉重信の招きで一寺を建立したのだそうです。里見氏との関係は特に義堯の時代になって強くなり、住職・日我は義堯のブレーンの一人だったといいます。里見氏に関する文書や北条氏の制札が多く残されており、当時を知る上での一級史料の宝庫としても知られていますが、この妙本寺の裏山に城砦があったことを知る人は少ないのではないでしょうか。

城砦といっても、物見と太鼓打ち場を兼ねた小規模な曲輪と堀切があるだけですが、里見氏の歴史にたびたび登場するように、幾度も合戦が繰り広げられた舞台でもあります。それはなんと言ってもこの妙本寺の地勢にキーがあるようです。妙本寺砦は海に突き出した標高30mほどの岩山ですが、この両側には吉浜、保田の砂浜が広がっています。北の金谷城・明鐘岬と南の勝山城に挟まれた中継地だったことと同時に、切り立った岩盤の多い海岸線に開かれた小湾状の砂浜は、軍事港としても物流拠点としても、また北条氏から見たときの上陸ポイントとしても非常に重要な地点です。むしろ、ここに砦を築かない方が不思議で、もっと言えば、もう少し本格的な、恒久築城があっても全く不思議でない場所です。

前述の通り、遺構は小規模な曲輪と堀切のみです。とくに堀切は明瞭に残っています。この妙本寺の裏山には通らしい道は無く、寺内の墓地から直登するしかありません。まあ大した高さでも急斜面でもないのですが、海に面した側は屹立した岩肌になっていて、滑り落ちたらタダでは済みません。しかし、その景色の素晴らしさは保証します。足もとに気をつけて見学しましょう。また、本来はこの要害の先は海のはずですが、今では「道の駅 きょなん」ができてしまい、突端部の足もとが海、というスリルは味わえません。もしかしたら国道とこの道の駅の建設で、突端部は若干削られている可能性もあります。

城砦としての規模は小さく遺構も大したことは無いのですが、里見氏ファンはぜひ立ち寄ってもらいたい場所です。

痩せ尾根の道に残る、ごく小規模な曲輪。

小規模ながらもはっきりと確認できる尾根上の堀切。この手前(南側)には腰曲輪状の段もある。

最先端の「太鼓打場」からの絶景。手前は保田漁港、その先は鋸山と明鐘岬、金谷城方面。

こちらは南側、吉浜方面。いや〜絶景ですね。この景色だけでも来た甲斐あり(笑)。でも足もとはメチャクチャ危険。

こちらは西側の三浦半島。「指呼の間」とはまさにこういうことか。

安房の古刹・妙本寺。里見氏や北条氏関連の文書・制札が数多く残る。

亀ヶ崎方面から見た妙本寺(写真中央)。

実はこんな、切り立った崖だったのです。自然地形か、里見氏得意の削崖か、はたまた道路・道の駅建設の際の跡かは不明。

天文の内乱では、最後の勝敗を決めた「犬掛合戦」が有名ですが、実質的にはこの「妙本寺合戦」が勝敗を決めたようなもの。後に北条氏との激しい争いの舞台にもなったこの場所、景色も最高だし、里見ファン、行くべし!砦に入るには足元注意!(一応お寺の了解を取りましょう←自己反省込み。。。)

 

 

交通アクセス

館山道「鋸南保田」IC10分。国道127号、「道の駅きょなん」すぐそば。

周辺地情報

距離的に近いのは勝山城金谷城造海城。見所が多いのは佐貫城岡本城など。

関連サイト

 

 
参考文献 「すべてわかる戦国大名里見氏の歴史」(川名 登/図書刊行会)、「新編房総戦国史」(千野原靖方/崙書房)、「さとみ物語」(館山市立博物館)

参考サイト

余湖くんのホームページ

 

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